日経平均株価にも大きく影響するアメリカ・ニューヨークの株式市場、12月のダウ平均株価は、3万6000ドル近くで推移しています。
おととし3月、新型コロナの影響で急落し、一時、2万ドルを下回りましたが、その後、2年近くで1万5000ドル以上、上昇しています。
旧東京銀行出身で、ニューヨークで投資会社を経営する堀古英司さんは、およそ1年前、「コロナ禍でも株価は上がる」と分析していました。
ホリコ・キャピタル・マネジメント 堀古英司さん
2021年1月)
「コロナウイルスの問題はいわば一時的な自然災害。私はそもそも株価が下落する方が間違いでコロナによってもたらされた世界的な超低金利と財政拡大、これがサポート材料になってプラスの要因として効いてきて株価が上昇している。少なくとも超低金利が数年続くと言われているのでその間は資産価格が上昇しそうだといえる」
2021年は、予想通りの上昇相場となりました。未来を読むことは不可能ですが、堀古さんとしては、来年のアメリカ市場を、どう見ているのでしょうか?
堀古さん)
「アメリカの経済っていうのは来年も恐らく3%ぐらいの成長の力があると思うんですね。一方で長期の金利の水準見てみますと、実質ベースでみると今マイナス1%なんですね。要するに3%の成長をマイナス1%でファイナンスできるという歴史的に見て非常に魅力的な状況なわけです。ファイナンス的に計算するとビジネスの価値は無限大という計算式になるんですよね」
アメリカ政府の積極的な財政政策もあり、来年も株価は上昇すると分析しています。
ただ、懸念材料もいくつかあります。中央銀行に当たるFRB=連邦準備制度理事会は、11月から、段階的なテーパリング、金融緩和の縮小に踏み切りました。
金融緩和の縮小で、株価に影響はないのでしょうか?
堀古さん)
「今回非常に積極的な金融緩和やったんですね。ただ、マーケットはかなり株式市場が上がっているので、そのおかげで上がってるんじゃないかと思う人が大半だと思うんですけれども、実はそうではなくて、業績が上がって株が上がっている部分がほとんどなんですね。少々量的緩和の縮小が始まっても、むしろ、金利は比較的長期にわたって低位安定して、それがこれからやっと金融緩和の影響を受けて株の上昇があると思っています」
金融緩和を縮小しても、
好調な企業の業績や実質ゼロの金利を背景に株価は上がる力があるとみています。
一方、急激な経済の回復などを受けて、アメリカでは人手不足が深刻になっています。
サプライチェーンの混乱についてはどう見ているのでしょうか?
堀古さん)
「雇用市場に人が戻っていない理由はいくつかありまして、1つはコロナ後に実施されたた積極的な政府によるサポートですね。失業保険とか給付金とか様々なものがありましたので人々の財政的にしばらく大丈夫だという状況になっていることが1つですね。もう1つはコロナが完全に収束してるわけではないので、どちらかと言うと在宅で済ませたいという人も多いでしょうし、職場に帰ってくるのは怖いという人もたくさんいらっしゃるんだと思います。ただ、これはコロナが完全に収束するまでの長めの一時的な要因だと思いいます」
人手不足は「長めの一時的要因」として、いずれは解消されると分析しています。
物価の上昇、インフレが続いていることについては?
堀古さん)
「コロナの感染が拡大した直後に強烈なデフレが起こったんですよね。今はその反動なんですよね。人々の需要が急速に戻ったけれども生産活動はその間ずっとストップしているので供給が追いつかない状況。未だに労働者が完全に戻ってないですから、供給が追いつくわけがないので、長めの一時的要因としてのサプライチェーンの混乱と位置づけられると思います。ただ、これは経済の原則として物の値段が上がればサプライサイドというのは供給を増やしますから、時間が経てば価格が落ち着いてくると見るのが普通だと思います」
サプライチェーンの混乱が解消にむかえば、やがてインフレも落ち着くという見方です。
新たに確認されたオミクロン株の影響は?
堀古さん)
「株式市場というのは特に最近この傾向強いんですけれども、企業の価値が変わって上下しているというよりも最近特に投資家の心理が変わって上下しているという部分が非常に大きいんですね。投資家の心理というのは、分からないもの、見えないもの、不透明なものが一番打撃を与えるんです。そういう意味では、新しい変異株の影響が、投資家の心理を悪化させるのにはもってこいの材料。オミクロン株もそうだったと言えると思います」
オミクロン株のニュースが駆け巡った11月26日、ダウ平均株価は900ドル以上急落しました。
ところが、新型コロナ対策のトップが、「オミクロン株はそれほど深刻ではない」と発言すると、連日大きく値を上げるなど、まさに投資家心理が揺れています。
堀古さん)
「株式市場全体で言うと、コロナ以降非常に上がってきたのでバブルとか言う人結構いるんですけれども、そういう人たちが言うのは、上昇率だけを見て言っているのであって、実際に利益との対比を見て言っていない人がほとんど。我々が利益との対比でみると、一部割高なものもあるんですけれども、全体で見るとそれほど割高ではないので早晩相場が崩れることはないと思います」
堀古さんは、個々の企業を分析したうえで、「来年も株価は上がる」と見ていますが、今後、金利が上昇した場合は、注意が必要だと指摘します。
堀古さん)
「株式市場のリスクとしてはですね。低金利がコロナ後ずっと続いていますので、低金利ならではの現象が起こってるんですよね。いくつか挙げますと、1つは、ほとんど価値のない株でも買われている。あと仮想通貨も皆通貨として使ってるわけじゃなくて上がるから買ってるわけなので、金利がゼロだとこういう現象が起こるんですよね。株式でも普通に買うんじゃなくて、お金を借りてきて買う、レバレッジを利かせて買う、こういう動きも増えております。いずれ金利が正常化してくると、そういう取引が全て元に戻る。
また、個別の企業の株ではなく、S&P500など、アメリカ市場全体に投資する「インデックス」については、バブル相場だと見ています。
堀古さん)
「一言で言えばインデックス、これはパッシブ運用と言うんですけれども、私はパッシブバブルと呼んでましてですね。あまりに皆さんがインデックス連動とかパッシブの方に偏り過ぎている。これ市場の常なんですけれども。偏り過ぎたものは必ず反動が来るんですよね。そういう意味ではもう今行き過ぎの域入ってると思います。何が起きるかというと、パッシブ運用している人は、個別の株の価値を分析して多分買ってないので、少しでも下がると値動きだけ見て怖くなって売ってしまうということが起こってしまう。我々は逆にアクティブ、すなわち1つ1つの企業を分析して投資していますので、少々下がっても全然怖くないんです。全体を見るんだったら、全体の利益に対する今の株価が妥当かどうか常にチェックしておくべきだと思うんですよね。株が上がるから買うとか下がるか買うとか、そういう判断ではなくてちゃんと中身を見るべき。常にその作業は必要だと思います」
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