海外に住むビジネスマンに「日本のイメージとは?」と訊ねると「Robot(ロボット)」と答えることが多いと言います。日本は世界屈指のロボット大国。インターネットではロボットが喫茶店でコーヒーを差し出したり、スパゲティを作ったりしているシーンが流れ、日本を代表するテクノロジーの一環として紹介されていますよね。さて、この日本のイメージはまんざら嘘ではなく、現代の日本産業を支える重要なロボットとして「協働ロボット」への注目が高まっています。みなさん、ご存じでしたか?
協働ロボットは主に工場や組み立て作業場に導入される頼もしい味方になりつつあります。「コボット」という愛称でも知られ、車体や他の精密機器の組み立て工場で積極的に採用されているんですよ。ここでは気になる協働ロボットを導入する利点を5つ挙げて、わかりやすく解説していきたいと思います。
協働ロボットを導入する5つの利点とは?
早速「協働ロボット」を導入する5つの利点から解説していきましょう。大手企業のみならず、中小企業が注目する理由について迫ります。
自由に移動することが可能
かつて、工場が生産ラインに設置していた産業ロボットは巨大なものがほとんどでした。つまり、一度設置すると「移動ができない」といったデメリットがあったわけです。もちろん、産業ロボットは重量のある部品を使って組み立てができる優れものだと言えますが、ラインを改築したり変更する際に、移動するのが困難であることが難点となっていました。
それに比べて協働ロボットはサイズが小さめで、最少のものだと「アーム型ロボット」があります。言葉通り、腕の部分のみを組み立て、ラインに設置して、プログラミング通りに仕事をしてもらうのがミッションとなっていますが、軽量型となっているため必要時に持ち運びが簡単にできます。つまり、ロボットを移動する行程で手間がかからないということですね。パソコンでも携帯電話でも、現代は軽量化がもてはやされていますが、元はと言えばやはり「持ち運びが便利」だからと言えます。こういった、機転の効く項目を実現させたのが「協働ロボット」の魅力にもなっています。
作業員の補充に最適
現代の企業が抱える大きな問題とは一体何でしょうか?少子化現象が進み、若手の働き手を確保するのが難しくなってきています。それに輪をかけて、働き方改革によって仕事への縛りが緩くなったこともあり、繰り返しの作業が求められる環境での作業員不足が深刻化しています。また、年功序列制度への価値観に疑問視する声も増えてきている中、仕事場を自由に選ぶことを最善と考える若者層が増えてきていますよね。そういった背景が強まったこともあり、工場や作業場といったフィジカルなルーティーンワークを好まない働き手も増えてきていると言われています。そこで、頼りになるのが「協働ロボット」です。
協働ロボットはプログラムされた作業を繰り返し正しく行ってくれる優等生とも言える存在。そんなロボットを導入することで、単調な作業分担を大幅に賄うこともできるでしょう。組み立て作業のラインに数台を導入すれば、比較的、容易に作業員の補充が実現できます。新人作業員へのトレーニングを行ったり、基本知識を教えるといった行程も省くことができますね。
生産工場や組み立てラインでの仕事は同じ作業を繰り返すことが多く、長時間立ちっぱなしであったり、終始作業に集中しなければならないため、予想以上にハードワークになることが多いです。もちろん、作業員のメンタル面や健康は最大限に意識を傾けなければならないのですが、こういった環境に慣れず仕事を辞めてしまう従業員もいます。こういった問題を改善するためにも積極的に協働ロボットの導入が検討されているわけです。
人件費の削減に貢献
協働ロボットを導入すると人件費の削減に貢献できます。企業が最も多く負担する支出が「人件費」。もちろん、企業は従業員を増やしたい!そんな思いで人材を募集していますが、一人の従業員を雇うにはさまざまなところで費用がかかってきます。
例えば、採用費は求人サイトやリクルートエージェントに支払うコストです。採用が決まった場合は成功報酬を求められる場合もあります。次に、新人トレーニングや教育費。こちらは研修費用や資格取得費用が含まれますが、専門の講師やトレーナーを呼んで訓練を行う場合は別途費用がかかりますよね。さらに、作業員が着用するユニフォーム、携帯電話、名刺、ロッカー等の準備費もかかってきます。これらは純粋な初期費用で、さらにランニングコストとして給料や残業代、社会保険や福利厚生などがオンゴーイングで必要となります。
一方、協働ロボットにかかる費用は実施的に「メンテナンス費用」だけです。ここで、協働ロボットがいかにコスパに貢献しているかが浮き彫りになりますね。中には「プログラミングで費用がかかりそう」と思う方もいるかもしれませんが、協働ロボットへのプログラミングは以前に比べて格段に容易になっています。そのため、専門的な知識や経験がなくてもマニュアルに従ってプログラミングを実施することも可能です。実際、協働ロボットへのプログラミングはタッチスクリーンでできるようになっているため、視覚的にも学びやすくなっているのもメリットと言えるでしょう。
一定の生産数を維持することが可能
協働ロボットは残業にも屈しません。人為的に作業をする環境では労働時間にも限りが出てきますが、協働ロボットに至ってはそういった制限がありません。協働ロボットの作業を管理する人さえいれば、24時間の作業も不可能ではないからです。例えば、月間生産量を超える注文が入ってきたとしましょう。この場合、臨時で作業員を増員したり、残業を加えたりしながら生産量を調整する必要がありますよね。しかし、ここで作業員が休んでしまったりすると、一定の生産数を予定通りにこなすことが難しくなってきます。ここで活躍するのが「協働ロボット」です。
協働ロボットなら基本的なメンテナンスを行っていれば、途中で作業を止めたりすることもありません。つまり、予定通り一定の生産数を維持することができるわけです。工場や組み立て作業場で頻繁にトラブルになるのが「生産が追い付かない」「納期に間に合わない」といった問題です。この課題を改善するためにも協働ロボットは力を貸してくれるでしょう。取引先との絆を維持するために最も重要な鍵が「信頼関係」です。約束した日に商品を収めることができなければ、その絆もやがて下降線をたどってしまいます。
商品の統一性を維持
安定した生産量を確保している「協働ロボット」は取引先にとっても安心できる存在と考えるべきです。なぜなら、協働ロボットはプログラミング通りに作業をしてくれるため、作業に癖が出たり、間違いが出にくいと言えるからです。例えば、新人作業員の場合は経験が浅いということもあり、単純な組み立て作業でも個性などが出やすくなることもあるでしょう。
一方で、協働ロボットを考えてみると全てがプログラム通りに動くため、商品が全て同じに出来上がることが期待できます。もちろん、繊細な箇所を組み立てる場合や最終的な確認段階では「人の手」が必要になりますが、単純な作業なら協働ロボットにドーンと任せるべきでしょう。商品の統一性を維持するには「協働ロボット」は最高のヘルパーだと言えますね。
まとめ
協働ロボットの活躍ぶりには非常に顕著なものが見られます。何より、2013年に産業ロボットへの規制やルールが変わり、同時に大規模で扱いにくいといったイメージも一新しました。以前に必要だった柵が取り外され、人と並んで一緒に働くことができる協働ロボットに企業も注目しています。安全、低コスト、低メンテナンスの3つの基本的なメリットを備えた協働ロボットは、現代の工場が抱える問題を改善してくれる強い味方です。未来型ファクトリーを支える新しいパートナーとしてもぜひ導入を積極的に検討していきたいですね。