アメリカのインフレが止まらない。
10月の消費者物価指数の上昇率が31年ぶりの高い水準となった。
バイデン大統領「失業率は改善し続けているが、物価は依然として高すぎる」
アメリカの10月の消費者物価指数は、前の年の同じ月と比べて6.2%の上昇と、およそ31年ぶりの高い水準になった。
コロナ禍からの景気回復で需要が高まっているのに対し、エネルギー価格の高騰や人手不足などで供給が追いつかず、幅広い商品で値上げの動きが続いている。
バイデン大統領は、エネルギー価格の抑制や供給網の混乱解消などに努めるとしている。
このニュースについて、経済アナリストの馬渕磨理子氏に聞く。
三田友梨佳キャスター「市場の分析にくわしい馬渕さんは、アメリカで加速するインフレについてどうご覧になりますか?」
馬渕磨理子氏「今、アメリカはリベンジ消費が盛り上がる一方で、供給側の制約が長期化したため物不足が進み、インフレが加速しています。具体的には、ガソリン価格は50%近く上昇し、そのガソリンを使って走る中古車価格も26%の上昇。そして、暮らしに欠かせない食品も5%台の値上がりとなっています」
三田キャスター「日本でもガソリン価格の上昇が伝えられていますが、アメリカでは5割近くも値上がりしているんですね」
馬渕氏「今、石油資源などは高くても買い手がいるため、値段が下がらないサイクルに入っています。それともう1つ見逃せないのが、環境重視の脱炭素の影響です。CO2の排出量を減らすために火力発電の削減が進むと、持続可能な代替エネルギーでカバーし切れずに電力不足で工場の稼働が抑えられてしまいます。これによって企業は仕入れコストが高まり、価格に転嫁せざるを得ませんので消費者にも影響が出てきています」
三田キャスター「インフレの懸念が高まれば、加熱した景気を冷やすために利上げとなるんでしょうか?」
馬渕氏「アメリカで金融のかじ取りを担うFRB(連邦準備制度理事会)が利上げをするには、2つの条件があります。それが、物価の安定と雇用の安定です。今のように高いインフレが続いてしまうと物価が安定しないのですが、景気の腰折れが懸念されますので、簡単には利上げに踏み切ることはできません。そしてもう1つの雇用については、10月の雇用統計で失業率は4.6%と改善されているように見えますが、これは労働意欲がある人の失業率なんです。そもそも労働を諦めている人もいますので、労働参加率の改善が進んでいません。やはり労働市場の回復はまだまだという印象があります。ここでも、利上げはまだ早いという印象です」
三田キャスター「利上げの時期については難しい判断が迫られそうですが、一方で日本のインフレ、物価の上昇についてはいかがでしょうか?」
馬渕氏「高いインフレが続く欧米に比べれば、日本の物価上昇は鈍く、差は依然として大きいといえます。このままですと、円安、物価安、賃金安の安い日本、ディスカウント・ジャパンの状態が続いてしまい、日本だけが世界の経済成長から置いていかれてしまいます。賃金が上がらないのにガソリンなどの物価だけが上昇してしまう悪いインフレを避けながら、経済再生の道を探る難しいかじ取りが今求められています」
三田キャスター「世界的なエネルギー不足などは近いうちに収束する兆しもほとんどありませんから、国内経済においても先行きが懸念されます」