今年2月のウクライナ紛争開始で際限なく上がることが懸念された原油価格だが、6月後半以降は下げが続き8月になって一時は85ドルまで下落してきた。今後も原油安は続くのだろうか?
ウクライナ紛争開始で高騰
原油価格の国際的な指標として利用されるのは、NY先物市場で取引されるWTI原油。ニュースなどでよくドル建ての原油価格として出てくるのがこの価格だ。
原油価格は他の商品先物と同じように2020年秋頃から高騰し、特に今年2月24日に始まったウクライナ紛争の開始直後に暴騰。ロシア軍がウクライナの原発を攻撃したと報じられた3月上旬には130ドルになった。なお原油の史上最高値は2008年につけた147ドル。
その後は少しずつ下がる
130ドルまで高騰した3月上旬当時は、「史上最高値更新は時間の問題か!?」と思われたものだ。しかしチャートを見るとわかるが、その後の原油価格は意外な動きを見せている。原油のチャートはウェブ上の金融情報サイトで見られるが、海外業者のEasymarketsのチャートなどが見やすい。
3月上旬に130ドルをつけた後は30ドルほど急落し、その後ゆっくりと上昇して6月上旬には120ドルを回復。しかし6月後半からは一貫して下がり続け、8月にはウクライナ紛争開始前の水準となる85ドルをつけた。
世界経済の後退懸念が原因か
6月から8月にかけて原油が下がってきた原因はいろいろ考えられる。まずは世界的な景気後退懸念が高まり、原油需要の減退見通しが高まったこと。世界的な景気後退懸念を高めているのは、アメリカが2022年中はかなりの幅の利上げを続ける見通しであること。それに春には中国でコロナウイルスの感染が広がりロックダウンが行われたことなどがある。
それに加えてイランと国際社会の核合意に、アメリカが復帰するための交渉が進んでいることも原油売り材料となった。また8月前半には、9月に小幅な増産を行うことで産油国が合意した。
今後は産油国の動向次第か
今後も原油価格が下がるのかどうかは、産油国の動向次第だろう。まずイランが欧米各国が出している条件を飲み、アメリカが核合意に復帰できれば売り材料になる。
しかし同時に、イラン核合意にアメリカが復帰すれば産油国がまた減産をするのではないかという観測も出ている。減産が行われれば、今後原油が下がる可能性は低くなる。
これらの材料の他に、今後の世界経済の後退やウクライナ紛争の展開などいろいろな要因によって原油価格が動く。しかし新たな売り材料が出れば、70~80ドルくらいまで落ちてもおかしくはないだろう。