ロシアによるウクライナへの軍事侵攻。マリウポリ市議会によると、最後の砦、アゾフスタリの製鉄所の地下シェルターには、1000人以上の市民が避難しているといいます。ロシア国防省は改めて投降を要求するも、応じたものはいないそうです。ロシア軍は「地下貫通弾」で攻撃を行っているというの情報や、製鉄所が爆撃され完全に破壊されたという報道もあります。一方、米国側からは「陥落するとは思わない」情報も。本当のところは、どのような状況なのでしょうか?専門家の分析をもとに解説します。
■地下貫通弾 東部マリウポリの現状
ホラン千秋キャスター:
ロシアによる軍事侵攻攻撃が強まっている南東部の街、マリウポリの状況について見ていきます。(地図の)ピンク色の部分がロシア軍が制圧したとみられる地域で、オレンジ色の部分がロシア軍が進軍したとみられる地域です。マリウポリの進軍していない地域が狭まっている状況です。現在、海の近くにあるウクライナ側の拠点、アゾフスタリ製鉄所は、危険な状況のようです。
マリウポリ市議会
「地下シェルターに1000人以上の市民が避難している」
この製鉄所は、地下にかけて何層にもなっているので、少し生活ができるくらいの設備があるようです。ロシア国防省は、4月19日午後10時(日本時間)を期限に投降を呼びかけていましたが、「応じたものはいない」と発表。そして、 ウクライナで言うと日中時間になります、4月20日午後8時(日本時間)以降の投降を改めて要求してきました。
ではマリウポリの現在の状況はどうなのか。
ゼレンスキー大統領
「マリウポリは何の変化もなく、依然として厳しい状況だ。ロシア軍は、人道回廊を組織し人々を救おうとする試みを阻止している」
アゾフスタリ製鉄所については、ポドリャク大統領府長官顧問が4月19日に自身のSNSで「ロシア軍は地下施設に直接攻撃が可能な“地下貫通弾”による攻撃を行っている」と投稿。地下貫通弾というのは、地面に刺さった後に爆発するものですが、この地下を狙い撃ちしてきている状態です。ウクライナの現地メディア、ウクラインスカ・プラウダ紙には、ウクライナ軍と戦いを共にしているアゾフ連隊の副隊長の記載があります。
アゾフ連隊の副隊長
「製鉄所が爆撃され、ほぼ完全に破壊された」
■米国「マリウポリは陥落するとは思わない」
製鉄所のいたるところに爆弾が落とされ、多くの人ががれきの下敷きになっているという報道もありました。これはロシア側の発表ではなくウクライナ側の発表ですので、情報戦なのか、それとも真実なのかというところが注目されます。このマリウポリの状況やロシア軍について、アメリカはどう分析しているのでしょうか?
カービー報道官
「マリウポリは陥落すると見る人もいるが、我々はそうは見ない。キーウもチェルニヒウも陥落しなかったし、ウクライナ側はマリウポリで戦いを続けている」
米国防総省高官
「ロシア軍の現在の戦闘力は、侵攻開始時点の約75%」
ウクライナ側がどれくらい失っているのかというのも注目なんですが、わからないような状況です。
井上貴博キャスター:
小谷教授は、アメリカ側がきっぱりと否定している状況をどう分析されてますか?
明海大学 小谷哲男教授:
マリウポリが非常に危険な状態であることは間違いないと思います。毎日のようにロシア側の攻撃は激しさを増しているようですし、一番心配なのが、今立てこもっているウクライナ軍と市民がいるわけですけれども、補給がかなり難しくなっているようです。
数日前までは夜間にヘリコプターが低空飛行で補給をしていたようなんですが、それが果たしてできているのかどうかという点が一番のポイントだと思います。もしかするとその補給が難しくなってきているのではないかと考えていますので、武器弾薬、それから水食料が届けられないということになると、かなり厳しい状況になると考えられます。
井上キャスター:
ウクライナは投降しないと言っていますが、ロシアは投降してくださいと要求している。ロシアとしては、そこまで攻撃能力がないので投降してもらった方が楽だという気持ちなのか、どういう意味合いだと取れますか?
小谷教授:
ひとつには、ウクライナが抵抗を続けていますので、降伏を勧めてそれを受け入れてくれた方が、ロシア側も被害を収められ抑えられるというものがあります。もうひとつは一刻も早くマリウポリを陥落させて今マリウポリを攻めている部隊を北上させてドンバスでこれから始まる戦闘に加えたいわけなんですね。そういう意味で降伏を勧告するということに意味があるわけです。
■世界の動きは?
ホランキャスター:
4月19日に、G7(主要7カ国)の首脳らによるオンライン会合が行われました。ここでバイデン大統領は、追加の砲撃兵器をウクライナに提供する意向を表明しましたが、これに続き、イギリスやカナダでも砲撃兵器の支援を行う考えを示しているようです。
そして、4月20日の夜に、G20(主要20か国)財務相・中央銀行総裁会議が行われるんですが、ロシアもオンラインで参加する見通しです。そこでロシアの担当者の発言があるそうですが、それに合わせて西側諸国の財務相が一斉に退席する準備をしていることが伝えられています。
ゼレンスキー大統領
「バイデン氏のウクライナ訪問に期待。治安状況にもよるが、米国のリーダーなのだから見に来るべきだ」
バイデン大統領
「キーウ訪問についてはわからない」
複数の関係筋によりますと、バイデン氏については、安全面の懸念から訪問の可能性は低いということで、代わりに政府高官の派遣を検討しているということが伝えられています。首脳という意味で言いますと、イギリスのジョンソン首相が4月9日にキーウを訪問したことがありますので、バイデン大統領の動向に注目が集まっています。
井上キャスター:
秋元さんはここまでの経緯、どんなことを感じてますか。
食べチョク代表 秋元里奈さん:
ジョンソン首相が行かれた時もびっくりしましたが、戦時中の中で、行くというのは、一つの大きなメッセージになるんだなと見つつ、危険な状態だと思うので、なかなか判断できないと感じています。前の方の話題にはなってしまいますけれども、降伏を迫っている状況の中で、選択を迫られている側の身になってみると、結局どっちを選んでも、ロシアの言ってることが真実なのかわからないですし、本当に難しい決断を迫られている場面なのかなと思っていて、何かできることはないかと考えつつ何もできないもどかしさというのを常に感じています。
井上キャスター:
降伏したとしても、ウクライナの人たちはまた人権を蹂躙されることが過去の歴史からわかっている。だからこそ戦い続ける。
秋元さん:
何か提供するにしても、そこがインフラとして届かなくなっていて、どこで支援ができるんだろうっていうのは、すごくもどかしい気持ちで見ています。
井上キャスター:
支援という意味で、今までアメリカは世界の警察と言われていたが、そういったことがなくなってきた。アメリカ、ヨーロッパが外交の手段として何かできることはないのか、なかなかその動きは見えてきませんが、小谷教授はどう感じていますか。
小谷教授:
アメリカのバイデン大統領を含めてですけれども、頻繁に様々な国際会議を開いて、ウクライナに対してどのような支援ができるかということを話し合っています。その一方で、ロシアに対する制裁の強化に関しても連携をしていますので、外交面はかなり進んでると判断し、評価していいのではないかと思います。アメリカとしては、さらに外交、それから経済制裁を使って、一刻も早くこの戦争を止めるため、更に努力をしていくだろうと考えます。
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